時刻は早朝の5時。
外は明るいのか明るくないのか絶妙に微妙な時間。
「燈真、準備できた?」
小さくて真っ白な個室の中、こそこそとカバンに自分の荷物を詰める燈真を急かす。
まったく、少しくらい準備してれば良かったものを…。
待って、という燈真はファスナーを閉めると、慌ただしく個室をうろうろし始めた。
と思ったらボールペンと紙を握って、何かを書き出した。
ボールペンの先が紙と擦り合う音が響く。
何気に、燈真の病院の個室に来たのは初めてかもしれない。
病院って静かでちょっと怖いかも。
秒針の音も聞こえないし、電気が付いてるから明るいけど逆にそれがぼくの恐怖心を刺激した。
個室内は燈真らしく整頓されていて、本が数冊とスケッチブック、色鉛筆らしきものが見て取れた。
それから数分も経たずにカチ、という音と共にボールペンの先が内側へと引っ込んだ。