「…ずっとさ、親に歯向かったことなくて」



瞬間的に伏せた顔が、優の声によって自然と上げられた。



「あれしろこれしろ言われたら、ただ「はい」つって従ってきた。みんな家族と出掛けたりして楽しそうにしてたけど、俺にとって、親は怖くて抗えない存在で」



情けねぇな、と優は顔を伏せながら付け足した。

ずっとそんな自分が、情けなくて恥ずかしいから嫌いだったらしい。

真っ暗な公園に、僕達を見つめる街灯が立っている。

その周りには小さく小賢しい虫がたくさん飛んでいた。



「まぁ、俺が何言っても父さんたちは聞く耳持たないだろうけど。言いたいこと言えて、スッキリしたわ!」



空を仰ぎながら背伸びをする優は、言葉通りスッキリしたような表情で。


でも、ちょっと不安そうな顔。


本当は、そんな相手に反抗するのは怖かったはず。

微妙に震えているのを見逃さなかったし、靴が思うように履けなかったのも視界が滲んでいたせい。