「ひょえぇごめんなさぁい!」
廊下ですっ転んだ優のお父さんに頭を下げて謝り、優の元へ走る。
すぐに追いつかれるというのに、何をしているのか一向に優が動かない。
「何してんだよ!」
「靴が履けねぇ…!」
「持って出りゃいいだろ!」
あぁ、その考えがあったか、みたいな顔をしている優を急かし、大急ぎで優の家を出る。
裸足で歩道を走っている姿はなんとも滑稽な姿だったが、とりあえず走った。
それから少し離れた公園に身を隠す。
どこを探しに行ったのか、それとも探す前に諦めたのか、こちらには来ていないようだった。
優はほっと息を吐きながら、手に持っていた靴を履く。
「いんのか?伊緒」
「いるよー。隣に座ってる」
はぁはぁ、と荒い息を繰り返す優は「そうか」と言って黙り込む。
夜の10時過ぎだから、当然公園には誰一人いない。
柔く頬を撫でる生暖かい風は、ブランコを寂しそうに揺らした。
「今日は野宿?」
「かもな。」
優の渇いた笑いが静かな公園に響く。
会話という会話はそれっきりで、空を眺めている優に目を向けた。
