やがて目的の人物の前で足を止めると、優のお父さんは手を振り翳した。


ハッ、としてももう遅い。


静まり返ったリビングに、渇いた音が響くのが早かった。



「優…!」

「親に向かってなんだその口の利き方は!」



優のお父さんが、怒声を上げる。

さすがのお母さんもびっくりしたのか、目を丸くして固まっていた。



「そんな子に育てた覚えはないぞ!」

「そんな子ってどんな子だよ!」



喧嘩し始めた優たちをどうにか落ち着かせようと優のお母さんが立ち寄るけれど、どちらとも聞く耳を持たず。


そこは親子なんだな…。


このままだとまた優に手をあげてしまうかもしれないと思ったぼくは、どうしようかと優のお母さんと頭を悩ませる。



「えぇどうしようママさん…!」



そう声をかけるけれど、当たり前ながら返答は返ってこない。

ふと視線を向けた先に、視界に入ったコーヒーカップ。


…おいおい、それは…アリ?



「いや、それはダメだ…!」



なんとか自分にそう言い聞かせる。

けれど、1度それを目にしてしまうと逃れられなくなってしまうのがぼくらしい。

それに、もう優たちを止める方法はこれしか思いつかない。



「よし……ごめんなさぁい!!」



パリン──────と、硝子の割れる音がした。