飽きた、という単語を聞いた優のお父さんが、さっきよりも深く眉間に皺を刻んだ。
「なに?」
「…飽きたって言った」
「なに馬鹿なことを…!」
「馬鹿なのは父さんたちだろ!」
普段大声を出さない優に驚いたのか、向かい合わせに座っている2人が軽く目を丸くした。
けれどそれも一瞬で、すぐに目が細まり、それは鋭い目付きとなった。
「昔っから、口を開けば勉強ばっかり。学校が終わっても友達と遊べなかったし、勉強しかしないから友達もいなかった。付き合いが悪いから友達が減って、流行りものも知らないから除け者にされ……。散々だったよ」
そう語る優の声は震えていて、昔からそんな思いをしていたのかと思うと胸が痛んだ。
これを聞いた2人も、今までの行動を見返してくれる、少しは反省するだろうと思った。
なのに、この人たちはそんなことしなかった。
しようとも、しなかった。
「それがなんだ。友達が減ったのは自分のせいだろう?何でも親のせいにするんじゃない」
「そうよ?私たちはあなたのためを思って…!」
「そんなの俺のためなんかになってねーんだよ!」
ドン─────!と、テーブルを叩いて立ち上がった優のお父さんは、鬼のような顔をしてこちらに迫る。
