優が帰りたくないと言っていたのも、納得がいった。



「何か言いたいことでもあるの?突っ立ってないで部屋に戻りなさい。ドアの前に居たら邪魔でしょう」

「優、言えよ。何でもいいから反抗しろよ…!」



我慢ならなかったぼくは、優の両肩をグッと掴んだ。

なんなら星奈たちの時みたいに暴れまくって壊しまくってもいいくらいの勢いだけど、さすがにそれは躊躇われた。

まぁ、優が良いって言うんなら別だけど。



「……なに、言ったって、聞いてくれないんだよ。」



ぼくが押しやった際にぽろっと零れた優の涙が、床に小さな水溜まりをつくった。



「どうせ聞いてくんないだろ。俺の話なんて」



伏せられた顔に、さらりと落ちてきた前髪の隙間から鋭い目が覗く。

ギロりと睨まれていたのはぼくではなく、優の両親に向けられていたものだった。



「なんだ、その目は。人を睨む暇があったら勉強をしろと言っているだろう?」

「勉強勉強……って、もう、飽きた。」



もうそろそろ殴ってやろうと思った時、優がゆっくりと口を開いた。