僕も遅ればせながらも、控えめに手をあげたけど。
手を振った先には誰も居なくて。
ドアの閉まる音が、「今更、もう遅い」と言っているようだった。
『明日ね〜』
『今度来る時はみんな連れてこよー』
そんな些細な言葉が、意外と大事だったりするのかもしれない。
僕には明日生きている保証も、今度が来るかも分からない。
ずっとそう思っていた。
僕だけが。僕には。僕はもう。
だけどそれはみんな同じだった。
みんな明日生きている保証も、今度が来るかなんて分からないんだ。
明日、世界が廻っているかどうかなんてそんなの誰も知らないし分からない。
人間がキラキラして見えるのは、きっと、終わりがあるからなのかもしれない。
…例えばこれがゲームだとすると、ドキドキしない?
どこに敵が潜んでいるのか、どこで殺られるのか。
分からないから、ドキドキして、好奇心でもっと先へ進みたくなる。
「…疲れた…」
着替えを終えベッドに潜ると、一気に疲労感が襲ってきた。
閉じた目をそっと開く。
視界に映るのは何処も彼処も白だらけ。
だけど、もうすぐここから逃げられるのだと思うと、唇の端が上がった気がした。
