Lonely daze




喉が渇いたと言う妹さんに、もう少しで家に着くから我慢しろと言っても聞かないため、横断歩道を挟んだ向こう側にある自動販売機に行ったらしい。


車の通りが多くて一緒に行くのは危ないと思い、近くにあったベンチに妹さんを座らせた優真はひとりで飲み物を買いに行った。



「公園にボール持って行ってて、それが風で道路の方に転がっていっちゃったみたいでさ」



それを拾おうとした妹さんが、道路に飛び出したらしい。赤信号の中に。



「そこ見てなかったからわかんないけど、後ろ振り向いたら咲希が轢かれそうになってて」



これまでスラスラと言葉を発していた優真が途端に押し黙り、顔を伏せた。

いつもヘラヘラしている優真のこんな表情は、
初めて見るものだった。



「おれは助けられなかったんだ。ただ、その場に立ち尽くすだけで……。妹を庇ってくれた人がここに入院してて。」



だから、何年か前からこうしてお見舞いに来ているらしい。

その人は病院に運ばれた日からずっと、目を覚ましたことはないらしい。



「今日もその人のお見舞いに来たってこと?」

「そーゆーこと。時間なくなるからもう行くね。今度来る時はみんな連れてこよー」

「あそ。じゃ、気をつけて。」



案外あっさりだなと思いながら、優真はヒラヒラと片手を振って病室から姿を消した。