「なんですか」
「あ、えっと、伊緒ちゃんのことなんだけど…その、腕の傷、大丈夫だった?」
眉を下げ、どこか申し訳なさそうにして聞いてくる七瀬先輩。
それは自分で聞けば…と思ったのが正直なところだが、まぁ、何かとめんどくさいので口を開こうとした時。
「あ、伊緒なら大丈夫だったみたいよ。浅い傷みたいで良かったよ、ほんとに。」
僕ではなく、月城先輩が先に口を開いた。
「ほんと?良かった…。」
それを聞いた七瀬先輩は、ほっと胸を撫で下ろした。
今すぐにそれを訂正させて頂きたい。
それはあいつが先輩たちのために言った嘘だと。
本当は深い傷で、本人は笑ってるけどそれはただ強がっているだけなんだと。
…当然、そんなことを言う前に口すら開けないけど。
それからすぐにハッとした七瀬先輩は、口を開いた。
