「じゃ、また明日ね」
「気をつけてねー」
そんな軽い挨拶が終わり、伊緒たちが手を振りあって別れる。
最近、気づいたことがある。
本人は気づいてないだろうけど、伊緒はみんなが帰ろうとすると、寂しそうな顔をする。
そんな表情が、最近ずっと僕の中にあってむしゃくしゃする。
はぁ…吐息を吐き出した、ゆっくりと歩くいつもの帰り道。
コンクリートには、5人の影が伸びていた。
少し前まで寂しそうな影ひとつだったのに、今じゃ4つも増えていた。
その所為か、僕の影が少し嬉しそうに見えた。
「優真、今からいくのか?」
「うん。まだ間に合うからね」
前方からそんな話し声が聞こえ、耳を傾けようとすると、それは隣から降ってきたもうひとつの声によって防止された。
僕は今、盗み聞きしようとしていたのか…?
あぁもうほんと、ぼーっとしてるとだめだ。気を引き締めなければ…。
「あの、早瀬くん」
久々に自分の苗字を呼ばれ、一瞬誰だよと思うが瞬時に理解する。
自分の苗字忘れるとか大丈夫か僕。
そんな心配をしながらも隣へ視線を向けると、この中で一番身長の低い七瀬先輩がいた。
その隣には月城先輩も。
