「俺は行く。最近色々あったから家に帰りたくなくて。逃避行する」
そう語る優の表情には、どこにも迷いがなさそうだった。
「私も…!逃避行しに行く!」
「よし……あとは優真と伊緒ね。どうするの?」
「もちろん、ぼくは行くよ」
さぁ、あとは優真だけ。
カチ、カチ───────と秒針が刻まれる。
5時になるまで、あと10秒。
9、
8、
7、
「おれ……」
5、
4、
3、
2、
「行く!」
1──────────
カチ────と、針が5の数字を差した。
「おっけー。じゃ、逃避行兼伊緒の記憶探しの計画を、明日立てよう」
すっかり忘れていた、記憶を探さないとだった。
ここに来て目的が頭からすっぽりと抜けていた。
星奈に感謝しつつ、これから始まる逃避行兼記憶探し。
これから独りぼっち同士の、僕たちの旅が始まろうとしていた。
