「ありがとね、来てくれて。さっきよりも落ち着いたよ」



ずっとあのまま部屋にいたら、何をしていたか分からないから。


だから来てくれて助かったし、こういう所は本当に尊敬する。


目の前で浅く呼吸を繰り返す優くんは、



「ちょ、待って」



膝に手をつき、顔を伏せながらそう言う。

確かに、普段引きこもりをしている優くんにとってはキツかったかもしれない。



「大丈夫?」



この時期は熱中症など危ないため、バッグに入れていた飲み物を優くんに渡した。



「おぉ……。……このまま学校行くか」



少し落ち着いたのか、ポケットに手を突っ込みながら先を歩き出してしまった。


きっと優くんは、僕がトラウマのせいで何かあったということを知っているのだろう。


けれど何も聞いてこないという優くんなりの優しさ。



「置いてかないでよ〜!」



それに感謝しつつ、先輩であり親友である優くんの隣まで走った。


二人で歩いている時、「うわぁー!!!!」というとてつもない叫び声を耳にするまで、僕らは呑気に笑っていた────。