床に両膝を付け、震えが止まらない手をぎゅっと握った。



「ふぅ…」



大丈夫。集中して、慎重に。

そう自分を落ち着け、ペットボトルへと手を伸ばした。

───────それが例え拾えなくても、ぼくは手を伸ばし続けた。


なぜ?


なぜだろう。拾えないのに、触れられないのに、どうしてぼくは手を伸ばし続けるのだろう。

拾えないのなら、触れられないのなら、諦めてしまえばいい。

今までそうやって、生きてきたじゃないか。

なのにどうして、ぼくは手を伸ばし続ける?



「───────ん、あげる」



泣きそうになっていた時、そんな声が聞こえたのは幻聴だと思っていた。

頭上から聞こえてきた声に沿って顔を上げると、飲み物を差し出す人がいた。

ぶっきらぼうだけど、無表情だけど、誰よりも優しいそんな人。

あぁ、そうか。わかった。



「要らないの?」

「い、要るよ!いるいる」



膝についた少しの砂を払い、立ち上がる。