微妙に開いているカーテンの隙間から、差し込んでくる光で目が覚めた。

まだ蝉もお休み中らしく、鳴き声もあまり聞こえてこなかった。

ソファで寝ていたはずが、いつの間にやら床で寝ていた体を起こして伸びをする。

それから、しばらくぼーっとその場で立ち尽くした。



「…喉が……」



急にハッとしたぼくは喉の渇きを感じて、たまたま目に入った水を手に取った。

昨日買って来た残りだろう。そう思いながら、蓋を外そうとしたその時───。



ボトッ──────。



ペットボトルを握っていたはずの手が透けて、床に転がり落ちてしまった。



「お…っと」



コロコロ────────とやがて行き場を失くしたペットボトルは、やむを得ずその場で動きを止めた。


…集中力が、足りてなかったらしい。


憑依するにも物に触れるにも、集中して、慎重にやらなければならない。

それが寝起きで出来ていなかったみたいだった。

早く拾ってと言わんばかりに、ペットボトルにはスポットライトのような太陽の光が当てられ、キラキラと輝いていた。

ぼくは深く息を吸い、汚く濁った息を吐き出した。