何かはっきり思い出したというより、ほんの一部だけ思い出したような出してないような。



「…ううん、何も」

「そっかー。じゃあ1から探さないとだね。」

「ごめんね、付き合わせちゃって」



伏し目がちに謝ると、星奈は笑って首を横に振った。



「こっちこそごめん。怪我、大丈夫?見えないからわかんなくて……」

「あ、全然大丈夫だったよ!傷跡浅かったし、かすり傷みたいなもんだよ。だから、気にしないで。」



そう言うと、星奈はほっとした息を零した。

それからすぐに一華と話をし始めて、自分もほっと胸を撫で下ろした。

会話をする星奈はとても楽しそうに笑っていて、これからもずっと、そうやって笑っていられる世界であればいいなと思った。



「なんで、嘘ついたの」

「いちいちびっくりするから……心臓止まる。」



あ、止まってた。



「で、なんて?」

「なんで嘘、ついたの。結構深かったのに。」



それは多分、自分を責めないで欲しかったから。

きっと本当のことを言ったら、星奈は自分を責めまくって苦しむことになる。


僕はそんなの望んでいない。


今まで不幸だったぶん、それ以上に笑っていて欲しかった。