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「燈真くん伊緒ちゃん、お待たせー」

「帰ってきたー!」



時計を見るとお昼の1時を過ぎようとしていた。



「何が好きか分からなかったんだもん。文句は受け付けないからね」



そう口を尖らして、星奈が言った。

外は相当暑かったみたいで、みんなハンカチやタオルで汗を拭っていた。



「あぁ〜ちぃ〜。こりゃ夏休みここにいるの無理じゃね?」

「確かにみんな死んじゃうね?特に優く〜ん」

「馬鹿にしてんのか?」

「そう聞こえた?」

「おぉバッチリな」

「ならそうなんじゃね?」

「ちょっと来い」



嫌だね、と優真はべー、と舌を見せた。

それに怒った優希は、室内を逃げ回る優真を捕まえようと必死になって追いかけていた。


まったく、ただでさえ暑いというのに。


鬼ごっこをする彼らを横目に、広げてあったお菓子を手に取る。



「あの馬鹿どもはまったく。…伊緒は自分のことについて、何か思い出したことはある?」



ドロドロに溶けかけているチョコレートを口に入れかけた時、タイミングが良いのか悪いのか、星奈が口を開いた。



「ん?うーん……」