「僕、もうすぐ死ぬんだよ。だから、知っときたくて。」
そう言って、燈真は乾いた笑みを浮かべた。
読めない、知らない、分からない。
そう淡々と言う燈真は、今までとはまるで別人。
元々冷たいけど、いつもの冷たい感じじゃなくて。
「元々心臓が悪くて。ドナーも見つからないからあと4ヶ月で死ぬんだよ。みんな見つかるよとか頑張ってとか、さ…」
そう語る燈真は、この世の終わりのような、何の色も映っていないような冷めきった顔をしていた。
昨日、無茶なことをするなと叱った燈真の瞳と色が違う。
真夏の休日。いつもの秘密基地。揺らぐ陽炎。木々の隙間から聞こえる蝉の声。
ザワザワと、夏風の音と蝉の声が交わりあって。その音が、ぼくには空まわっているようにしか聞こえなかった。
「おしえてよ。」
その中に、低くて落ち着きのある声が、ひとつ交わって絡まった。
それは解こうとすればするほど、絡まってしまうような気がした。