「全部…っ、全部あんたのせいよ!」
そう叫ぶように言うと、おばさんは教室の後ろまで走り、割れて尖った花瓶の破片を、自分の手首に押し付けた。
あっ、え、そこまで考えてなかったのだが。
まさかそこまでするとは思っていなかったぼくは、星奈が口を開こうとするのを止めた。
今星奈が言っても、挑発してしまうだけだ。
「だけど、伊緒…っ。怖い… 」
もう既に泣いている一華と、泣きそうな星奈。
ざわつく教室。慌ただしい廊下。宥める教師。
誰もが息を呑んだ瞬間、ヤケクソになったぼくはおばさんの元まで走った。
瞬間、ぽたぽたと床に染みをつくる赤い水溜まり。
「う、っ……」
悲鳴のようなものと、動画を撮り始める生徒、救急車を呼ぶ教師、トイレに走る数人の生徒。
以外と深く切ったらしいおばさんは、荒い息を繰り返している。
そんなおばさんに憑依していたぼくは、彼女が深く切った傷跡と共に、彼女の身体から慎重に抜け出した。
倒れたおばさんを振り返り、左手首を確認すると、白くて綺麗な肌が確認された。