開いた口が塞がらない状態の僕を他所に、星奈は呆れたようなどこか悲しそうな声を出した。
「お金持ちなんてただの馬鹿よ。自分より下の人をとことん馬鹿にしたりよその会社潰したり。お金に余裕がない生徒が何人かいるんだけど、話しかけても無視してるっぽいし。」
「私もほんとに、そう思う。」
「えっ、君らもお金持ちなんじゃないの?」
お金持ちがお金持ちを馬鹿にしている、という所が気になった。
いや、まぁでも人前では口に出さないだけで、お金持ちがお金持ちを馬鹿にすることだなんて普通に有り得ることなのだろう。
勝手にそんなことを考えていると、2人して首を横に振った。
「星奈の所はそうだけど、私のところは全然で…」
何となく重くなる空気。2人の表情も少し硬い気がした。
「ふーん…まぁ、とりあえず行こう!中気になる!」
そんな空気を退け、どうせ2人以外には聞こえないと知っていたぼくは声を上げた。
ガラッと教室のドアを星奈が開ける。
真夏のため、教室には冷房がついていた。
