「で?なに、月城ちゃんは吠えたの?七瀬ちゃんの悪口に耐えられなくて?」

夕日が差し込む秘密基地。

ポツン、とひとつの光が僕達を照らす。

もうそろそろ病院に戻らないといけない時間。



「そうだけど月城ちゃんって何。誰。」

「え?もちろん君のあだ名に決まってんじゃーん」



相も変わらずヘラヘラしている優真は、あだ名を付けるのが趣味らしい。



「はぁ?」

「まぁまぁ落ち着けって」



そこで最年長であるやつが、優真と派手な先輩の間に入り込む。



「うっさいわよあんた。そこに座ってる燈真の方がまだマシよ」



まさかの瞬殺。

一発でHPゼロ、最弱とかレア以下じゃん。

そんな派手な先輩に大打撃を喰らった最年長は、漫画の世界へと現実逃避をし始めた。


ブツブツ言いながらも、最年長が手に取った漫画は少女漫画。


なんか、うーん…クールな顔して少女漫画を手に持つ最年長って、ちょっと、面白い。



「…幽霊の記憶探しはどうなったんですか」



そんな光景に何度呆れたことか、僕は言葉を発した。

面白いという感情もすぐに消えて、無に戻る。



「……僕もう帰り────────」

「いい事思いついた!」



口を開き、帰ろうとしたその瞬間、僕の声を遮ったひとつの声が部屋中に響いた。

若干気まづかった雰囲気が、どこから飛び出してきたのか幽霊のおかげで、ガラッと変わった。