笑い事じゃなかったし。

と、心の中で悪態をつく。



「君さ、なんかあるでしょ?」

「なんかってなんですか。あってもおま─────」



ハッ、として気がついた。

人間、感情的になると「お前」とか「あんた」とか言ってしまうらしい。

焦ってしまったのだ。

この一週間隠してきたことが、バレそうで。



「はは、おれのことは優真でいいよ。」

「優真には関係ないでしょ」

「わお、直球」



こいつの、ヘラヘラしてるところがあまり、いやまったく好きではない。

平気で人騙せそう。これは偏見だけど。



「まぁ、無理に聞こうとは思ってないけど。長い距離歩くと息切れする、走れない、そしてこっそり飲んでた薬……。それが気になってね。」

「それがなに。探偵にでもなったんですか。」



案外人を見ているこいつは侮れない。


長い距離を歩いて息切れした時も隠してたし、走れないのも隠してた。


それに、薬を飲んだのもこの人たちの前では1度きり。


この全てを、僕は隠してやってた。……つもり。


その証拠に、優真以外の人たちは疑ったりもしなかった。

ここは本当のことを言うべきか言わないべきか…と考えていたのに。



「探偵…?!おれ探偵に見える?!」



目をきらきらと輝かせて、さっきの独特の雰囲気は全く感じられない彼が目線の先にいた。



「は…?」

「ちょちょちょ!1回言って見たかったんだよ…!」



そう言うと咳払いをし、目が点になっている僕を優真は言った。



「真実はいつもひとつ!」



彼の口から出た言葉は、開け放った窓から入ってきた風と共に過ぎ去った。

この優真の一言は、どんよりとした雰囲気を一瞬で寒さに変えたのだった。