「あ、優真(ゆうま)起きた?おはよう」
「おはよ」
ニコニコと、人懐っこい笑みを浮かべるお母さんへ微笑み返す。
「ほら、あんたも早く座って」
「はーい」
そう言って笑う咲希も、お母さんにそっくりだと思う。
それから朝ごはんを食べる間、いつものようにお母さんと妹が会話に花を咲かせていた。
それを黙って見ていると、付けっぱなしにいていたテレビの音がふいに耳に届いた。
『××県××市で死亡事故が───────』
死亡と事故というワードが、スっと中に入り込み、染み込んでいく。
『咲希!─────────』
「っ…ごちそうさま」
「え?お兄ちゃん早っ!」
ちゃんと笑えたかどうかは分からないが、また自分たちの会話に戻ったため、安堵する。
ふらつく足取りで、何とか自室を目指す。
あの鈍い音、少し濁った白い煙、鮮やかな色をした赤い血、仄かにかおる血の匂い、ざわめく悲鳴、照りつける太陽、揺らめく陽炎、蝉の鳴き声───────。