いや、僕は同情なんかこれっぽっちも微塵もしてないけど。
なんなんだろう、彼らの顔がどことなく楽しそうに見える。
いよいよ目までおかしくなってしまったのか。
「何それ何それ!俺探すー!」
「わ、私も…!」
「一華がやるなら、わたしもやる」
「あ、じゃあ俺も便乗しとく」
人懐っこいやつがそう言うと、みんな挙手をし始めた。
それを見ていた幽霊が、「ありがとう」とお礼の言葉を口にする。
そうやって、いつの間にか笑い合うみんなが眩しくて、目を逸らしてしまいたかった。
「早瀬は?」
「…え」
その時、僕を呼ぶ声が聞こえ、伏せていた顔を上げた。
「えって、来るんだろ?
───────独り、なんだろ?」
それはスっと僕の中に入り、あっという間に溶け込んだ。
溶け込んで染み込んで、もう、後戻りは出来ないと思った。
「おいでよ、燈真。」
そう僕に向かって、柔く微笑む幽霊がいて。
その後ろに、楽しそうに笑う独りぼっちたちがいて。
非現実すぎて、信じ難い話だが、素直に楽しそうだと思う僕がいた。
ぼくも独りだ、みんな独りだ。誰かの温もりを感じたくて、差し出された手をとった。
それから始まった僕らの夏は、騒がしくて、現実離れした、少しだけ突飛な夏になりそうだった。