「ぼく忘れてません?」



そした隣に座っていた幽霊が、遠慮気味に口を開く。

僕以外の人はみんな声の主を探すようにして、キョロキョロと辺りを見渡していた。

幽霊の姿が見えないせいで、幽霊のことを忘れてしまっていたのだろう。


まぁ無理もない。それに、早くここから出たい。


そう思った僕は、仕方なく幽霊の居場所を指さした。



「…ここにいるけど」



そんな僕の声に一瞬キョトンとしたあと、彼らはハッとしたかのよう僕の隣に視線を移した。

どうやら僕以外の人には声だけが聞こえて、ただの空間に見えるらしい。



「…あ、え、え〜と、名前は?」

「え、あ。如月 伊緒(きさらぎ いお)です、多分…」

「声が良い…!あ、早瀬、お前見えるんだろ?」

「えっ…」



いきなりの名前呼びに少し驚きながらも、首を縦に振った。



「えっと、女子。……だと、思うけど」



まじまじとは見られなかったけど、多分、女子なんじゃないかな。

うーん……でもそうは言うけれど、僕には疑問があった。

こいつは自分のことを「ぼく」と言っていた。そこが疑問ではある。

まぁ世の中色んな人がいるし。こいつが男でも女でも僕には関係ないし。