「え、えっ、」



妄想でも勘違いでもなかったら、あれを一体どう説明すればいいのだろう。


あれが現実であれば、死んでいるはずだ。


車に敷かれているはずなのに、なのに、ピンピンしている。


僕はその場で呆然とした。


そして見つめすぎたのか、ばっちりと目が合ってしまった。


逸らそうにも、逸らせるはずかなかった。


この状況はあまりにも非現実過ぎて、あまりにも突飛過ぎた。



「あれ〜……ここら辺だと思ったんだけどな〜…」

「だからわたしはあっちから聞こえるって言ったじゃん!暑いのに無駄足!」

「でも確かにうわぁー!っていう叫び声聞こえたよね?」

「あぁ、確かにそうだな」



視線を重ね合うこと数秒、幽霊は途端に目を輝かせて叫ぶように言った。



「僕が見えるの?!」

「えっ…?」

「「「「え?」」」」



通行人は沢山いるし、車もじゃんじゃん通っている。

その中で反応した人は、僕だけじゃなかった。

その叫び声に似た言葉が聞こえた僕以外の4人と視線が重なった。



暑い夏、僕らだけの秘密の夏が始まった瞬間だった─────────。