夏の匂いを纏った風が、「大丈夫」だというかのようにやわく頬を撫でた。

ふと空を見上げると、青く澄んだ夏の空が視界を埋め尽くした。

なんだろう。いつか、誰かとこうして空を見上げたことがあったような。



「あ、飛行機雲……」



1本の線が、青い空を突き抜ける。



『……眩しいな』



そう言って泣いていた君は、どんな顔をしていたんだっけ。



『…一度あったことは、忘れないものなんだよ。ただ、思い出すことができないだけで。難しいだけなんだ。』



そう教えてくれた君は、どんな風に笑って、どんな風に泣いてたんだっけ。

それは脳裏を掠めて、結局思い出せないまま。


でも僕は、思い出せないあの子のことを、ずっと好きなんだ。


それはきっと、これからも変わらない気がした。