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風と混ざって聞こえてくる夏の音。

日差しを照りつけたアスファルトが熱い熱気を漂わせている。

どこを見ても陽炎が揺れていて、蝉の声は止むことを知らない。


ここは静かだから、自然の音が耳に届く。

うるさい街とは違って、ゆっくりと休める場所。安心するというか、抱きしめられているような感覚がして、すごく好きな場所。

時間は11時くらいだろうか。

気になっていた小説を読み出したら止まらなくなってしまって、ハッとした。



「…持って帰ろう」



読みかけの小説を鞄に詰め、秘密基地を出た瞬間だった。



『燈真』


「え…?」



また誰かに名前を呼ばれた気がして、振り返った。

けれどそこには当たり前のように誰もいなくて、周りをキョロキョロとしてみても同じだった。

でも不思議と恐怖心はなかった。寧ろ、安心するような。

今の僕の心境が伝わったのだろうか。