短いような長いような僕たちだけの夏の、現実逃避行。
始まりはなんだったか掠れて思い出せないけど、それでも、僕はあの夏の世界を描いて目に焼き付けておきたかった。
優希先輩の情けない後ろ姿も、
優真先輩のへらへらしながらも実は弱いあの後ろ姿も、
星奈先輩の強くて優しいあの後ろ姿も、
一華先輩のすぐ泣くあの後ろ姿も、
暑苦しい室内の中で、ずっと描き続けていた。
その中に自分も入れたりして、横に並んだみんなの後ろ姿。
「…あ、また…」
その時、ハッとして鉛筆を動かす手を止めた。
…たまにこうして、みんなの絵を描くけど。
無意識に、一番端っこにスペースを空けてしまうのだ。
そしてそのまま、描こうとしていた手を止めていつも気がつく。
なんで空けてんの。そしてそこに何を描こうとしていたのか。
ハッとする前の僕は、一体どうして何を描こうとしていたのか、僕のことなのにさっぱり分からなかった。
