社会人1年目の優先輩は、最近一人暮らしを始めたらしく。

そこにお邪魔しようという話になり、今に至る。

いや、あの。なんていうか、もう暑すぎて遠すぎて頭が回らない。

ため息を吐きながらも、滲む汗を裾で拭いながらなんとか足を動かした。



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「いやぁ〜黙って行ってたからさ、まぁそりゃ怒られたけど。なんか母さんたち謝ってきて焦ったわ」



無事に優先輩の家に辿り着き、部屋にお邪魔して駄弁っていた。

家の中は優先輩らしく、アニメキャラみたいなので埋めつくしてあり、趣味満載という感じ。

それから何がどうなってか懐かしい話になり、今は1年前の夏休みの話をしていた。



「わたしたちも学校行ったらさ、悪口言ってた子の腕に傷ひとつなくてびっくりしたよね」

「うん。結構血ぼたぼただった気がするんだけど…縫ったっていうあとも特になかったね」



いやそれはもう人間じゃない。怖い。



『燈真』



……え?

そう思った瞬間だった。

誰かに名前を呼ばれた気がして、顔を上げた。


違う…痛い。


その懐かしいような声が、僕の胸を締め付けた。

実はこういう感覚は初めてじゃなくて、以前から感じていたものだった。



「なんかさぁ、足りない気がしない?」



それはどうやらみんなも同じみたいで、そう言った優真に続いて他の人たちも口を開いた。