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「行ってきまーす」

「気をつけてよ〜」



バタン──────────と玄関のドアが閉まった。

休日の今日。僕はある場所へと足先を向けた。


炎天下の中を歩き出す。

とにかく暑い。

ゆらゆらと、どこを見ても陽炎が揺れている。


蝉も五月蝿い8月12日。夏休み。


僕はなんとか高校生になり、意外と充実した日々を送っている。

移植手術を受けてから、もう少しで1年が経とうとしていた。

手術も無事に終わり、その後も意外とスムーズに進んでいけていたような気がする。

退院もでき、その日には先輩も来てくれて。

家でも過ごせるようになって家族との時間も大事にしているつもりだ。



「…あつ」



だめだ。今日絶対熱中症の人いっぱいいるよ。

優先輩ん家遠すぎやしないか…。

去年の夏休み、短い逃避行から仲良くしてくれている先輩たちと、優先輩の家で集まる約束をしていた。