今にも泣き出してしまいそうな女の子。

黄色い帽子を被り、ランドセルを背負っているので恐らく小学生。


まだ低学年なのだろう。


女の子が走っていると言うより、ランドセルが走っていた。



「そうだ……飴、食べる?」



そう言いながら、ポケットに忍ばせていた飴を2つ取り出した。

道端に座っているためとりあえず女の子を立たせ、僕は屈む。

女の子のスカートなどを振り払い、黄色い帽子を被せた。



「よし…。どの味がいい?」



僕が取り出したのは、林檎とぶどう味。



「選べない?」



そう聞くと、こくこくと首を縦に振る。



「林檎とぶどう、どっちが好き?」

「……りんご」



小さくて聞こえずらかったけれど、確かに林檎だと女の子は言った。



「そっか。お兄ちゃんと同じだね。」

「お兄ちゃんも好きなの?」

「そうだよ。じゃあ、はい。これあげるから、学校頑張っておいで」

「うん!ありがとう!」



去る時は一瞬だな。

まぁ、最後は笑ってくれたから別にいい。