それは、この間伊緒のお父さんが住んでいるアパートに行った時の帰りに見せてくれたものだった。


僕のスケッチブックの上。


控えめに光を放つそれを手に取り、ころころと手のひらで転がしてみる。



「…ピアス?」



と、なにやら筆記体のようなものがぶら下がった目立たないネックレス。

この前見せてくれた時は暗くてあまり目につかなかったけど、明るい今ならそれがなんなのかすぐにわかった。

小さな金平糖のような星形の、付けていても目立たないようなピアス。


そしてネックレスには、『my heart』という筆記体がぶら下がっていた。


そういえば、伊緒もこれは一番のお気に入りだと言っていた気がする。

それらをぎゅっと握り締め、いつも外に出る時に羽織る上着のポケットに突っ込んだ、その瞬間だった。



「早瀬くん!」



勢いよく病室の扉が開けられたと思ったら、ずかずかとこちらへ寄ってくるから反射的に身を引いた。