「部屋に閉じ込められてたこともあって、その時に部屋の窓から見た空がすごい綺麗でさ。いつかぼくを好きになってくれる人が現れたら、星を見に行きたいっていう」



自分で言いながら恥ずかしかったけど、思い出した今でも、それは変わっていなかった。

誰もいなくて星が沢山見れる場所で、好きな人が隣にいてくれたら。

ぼくはきっと泣いてしまうだろうけど。



「今見てる」

「…え?」

「あんたを好きになってくれる人と、伊緒は見てる」



隣を見ると、若干耳を赤く染めた燈真が空を眺めていた。

いやそれに負けないくらいぼくも赤いだろうけど、立ち止まって、今は2人黙って星を見上げていた。



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『最初で最後のお願いなので、出来れば読んでください。

心臓を提供したいので、承諾してくれませんか。

場所はここから見える近くの大学病院にいます。

僕に残された家族はあなたしかいないんです。だからどうか、あなたの娘としてお願いします。

臓器提供を、承諾してください。』


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朝の通勤ラッシュをゆっくりと歩く。

そんな中をジャージで歩くぼくは目立っているように思えたけど、みんな急いでいるのか横目で流していく。

耳に開けたはずの穴は塞がり、ウルフだった髪の毛も伸びてしまってロング状態。


そんなぼくは、1時間ほど前に病院を出た。


燈真が寝るまでずっと隣で手を握って、必死に泣くのを我慢した。

夢も叶ったことだし、もうぼくにはなにもない。