別に欲しいわけじゃなかったけれど、担当医の先生があった方が何かあった時に使えるし、年頃だから、だと。
でも、あまり使わせてはもらえない。
だから特別欲しかったわけではない。
まぁでも、音楽を聴くのに使っている。
友だちや彼女の連絡先は当然入っていない。
登録されているのはお母さんとお父さんのみ。
おかげで公式の連絡先が増える一方。
なにをやっているんだか、自分でも笑える。
別に今死んだって悔いはないし未練もない。
「……早く死ねばいいのに」
なんて言っても、飽きもせずに月夜は廻る。
⋆ ・⋆ ・⋆ ・⋆
「無理は禁物だからね。あと、運動もだめだよ。分かった?」
「はい。……失礼します。」
そう先生に頭を下げてから病院を出た。
そんなん言うんだったら行かせなきゃいいのに。
『行ってみない?』
とか何とか言ってきたのはそっちでしょ。
そうぶつぶつ言いながら、学校までの道程を迷いながら歩く。
その時、
「うぉ…っ」
向こう側から走ってきた小さい女の子とぶつかってしまった。
「あ、ごめんね、大丈夫?」
受け止めるような形になったから、多分大丈夫ではあると思うけど。