「パパじゃない……だぁれ…?」

「えっ、あ…え、と……」



泣き出そうとするその子に、頭がこんがらがってしまう。

とりあえずその子と同じ目線になるように屈んで、名前を聞いた。



「ゆりだよ!お兄ちゃんのお名前は?」



お兄ちゃんて……髪の毛伸びてるはずなんだけどな…。

そんなことを思っていると、ゆりちゃんは小首を傾げながら待っていた。



「…お兄ちゃんは、伊緒っていうよ」

「へぇ〜」



というか、ここは怖がって母親起こしてくれないと困るんだけど……。

若干困りながらも、ニコニコと可愛い笑みを浮かべるゆりちゃんに、キュンときてしまう。

大変だ、これは頭を抱えてしまう。



「……ねぇ、ゆりちゃん」



そんなことを思う反面、気になっていることもあった。



「なぁに?」

「パパは、優しい?」



そう聞くと、「パパ?」と目をぱちくりとさせるゆりちゃん。

そんな彼女に、首を縦に振って見せた。