とそう聞いてきた燈真も、どこに行くのか帽子を深く被っていた。
なんだか、バレたくなさそうな格好。
じっと見すぎたのか、燈真が「あぁ、これ」と言いながら説明してくれた。
「ちょっと散歩したかったから。そしたらちょうど伊緒っぽい人が病院の裏口から出てったから 」
後を追ってきたらしい。
「戻んなくていいの?バレちゃわない?」
「大丈夫っしょ」
適当だな…。
ま、燈真らしいけど。
車の通りもほとんど無く、街灯もないのでお互いの姿はあまり見えない。
どんな表情をしているのかわからない燈真が、またもや口を開いた。
「どこ行くの」
「え、どこって…」
場所を言いかけ、ハッとした。
いや、連れて行くわけにはいかんと。
途端に口を噤むぼくに、燈真は訝しげな顔をして詰め寄ってくる。
あぁ、こんな時に言い返せる能力があれば…なんて思う。
結局押しに弱いぼくは、仕方なく口を開いた。
