「なんかすごい懐かしい感じはしたけど、思い出したのは割と最近」
「ふーん、そっか」
でも、覚えててくれてたんならいいや。
それだけでも、ぼくは幸せを感じられてる。
もうそれだけで、十分だった。
「……ねぇ、どこにも行かないでよ」
それは突然だった。
不意に訪れた沈黙を破った燈真は、そんな言葉を口にした。
その言葉に、僕は何も言ってあげられない。
『消えないで』
と、君の心を俯かせる言葉に、僕はただ手を握り締めることしか出来なかった。
……でも、
「…一度あったことは、忘れないものなんだよ。ただ、思い出すことができないだけで。難しいだけなんだ。」
そう言ったぼくに、燈真は俯かせていた顔を少しだけあげてくれた。
その今にも泣き出してしまいそうな顔をする君に、ぼくはへたくそに微笑んでみせた。
