小さくて本当に危なかっかしくて、声を掛けに行こうとした時だった。
その日は風が強くて、そのせいでボールが飛んでいってしまったのだろう。
ちょうど信号が変わった道路に、ボールを追いかけて飛び出してしまった。
びっくりして立ち止まったけど、すぐ側にはトラックが迫っていた。
「ほんとに、何にも考えないで妹ちゃんを内側に引っ張ったんだけど、大丈夫だったかなって。もうそれだけが心配だった」
でも、ぼくはその反動で身体が道路に飛び出してしまって。
トラックの運転士さんも驚いただろうな。
ブレーキを踏んだのは多分ぼくを轢き摺ったあとだった。
あの日は暑かった。蝉もやけにうるさく聞こえて。
目を開けた先には、澄んだ青い空が視界を埋め尽くして。
自分が纏っていた匂いと、流れ出ていく血の匂いが混ざって噎せ返りそうだった。
「後悔なんてしてないよ。だからね、優真」
未だに肩を震わせる優真の頭を、優しく撫でる。
