…違う。謝って欲しいわけじゃないのに。そんなに悲しそうな顔をさせたかった訳じゃないのに。
久しぶりの再会だというのに、どうしてこんな所でなんだ。
「…ち、がう……ぼくも、忘れたいなんて言ってごめん…」
「……謝らないで。伊緒は何も悪くないから。ね?」
と言いながら、伏せていた顔をいつの間にか上げていた兄は、ゆっくりとこちらへ歩み寄る。
やがて目の前まで来ると、優しく微笑んで頭を撫でてくれた。
「え、ちょ、なんで泣くの〜。ほら、泣かない。笑ってる顔の方が好きだなぁ兄ちゃん」
「うぅ…っ、だって……っ」
優しく、でも少し困ったような顔をして笑う兄が、僕の頭を撫でるその手が、昔のようでとても懐かしくて。
……そしてもう、お別れしないといけないという時間がすごく悲しくて。
「ねぇ伊緒、聞いて。…あのね、伊緒がこの先生きたいって言うんなら、それを上に伝えれば人間界でちゃんと生きることが出来る。」
そう言われた時、パッと頭に浮かんだのは燈真だった。