⋆ ・‎⋆ ・‎⋆ ・‎⋆

「お久しぶりです。いつぶりですかね。」

「…こん、にちは…」



目を開けば、小さな秘密基地の天井が見える──────────のではなく、真っ白な世界が広がっていた。


ここは、一度来たことがある場所。


身体を起こして上下左右見回してみるけど、視界に映るのはずっと白。

…出たよ異世界。来ちゃったよ異世界。



「思い、出されましたか?」



そんなことを思っていると、目の前の天使さんが首を傾げて口を開いた。



「…思い……出せました。おかげさまで」



それに数秒遅れて、返事を返す。


ちゃんと、思い出せた。


小さい頃に父親の暴力が原因で両親が離婚して、ぼくは父親の方に引き取られたことも。


小中高と、いじめられていたことも。


もう全部捨ててしまおうとしたその日に、交通事故に遭ったことも。

そして、どうして優真が泣きそうな顔をしてドアを見つめていたのかということも。



「────────ごめんね、伊緒。こんな兄ちゃんで。ごめん…」



とても悲しそうな顔を伏せ、ぎゅっと服の裾を握る兄。