そのコーヒーが入ったカップも、テーブルの真ん中に置いてあった花が咲いている花瓶も、全部床に突き落として。
ぼくの悪い癖。
「な、なんだ」
とこの状況を不気味に思った担当医とは反対に、慣れているのかなんの反応も示さない優たち。
「と、とにかく、患者が安定したらこっちの病院に戻すからな」
そう言うと、優真の手を振り払って部屋を出ていった。
ぼくたちはというと、隅の方に移動して黙って座っていた。
泣き出す一華を星奈が黙って慰めて、優たちも呆然としていた。
いつまでそうしていたのか、その沈黙が破られたのは優の両親がドアを開けてから。
床に落ちた萎れた花が、まるでぼくたちの姿をそのまま写しているようだった。
