⋆ ・‎⋆

「終わったー!」

「もう寝たい」

「よく終わったな……」



と言っても、もう夕方の16時ですけど。


お昼の13時まで部屋で寝ていた燈真は、優と一緒に晩ご飯を作っている。



「少し休憩してから洗濯入れよー」

「あ、いいよ。ぼくやっとく」

「うわぁぁぁ神がいるよ…。頼んだ伊緒」

「はは、うん」



リビングに漂う雰囲気は只者ではなく、思春期の年頃の部屋のようだった。


洗濯物が干さっているベランダまで出ると、あまり目につかなかった花が咲いていることに気がついた。


このベランダには夏の花がぽつぽつと咲いているけれど、その近くに、寂しそうに咲く花を見つけた。

洗濯物を籠に押し詰めていく手を止め、近くまで移動してその場に屈む。



「……たん、ぽぽ?」



近くで見るとよくわかる、そこには春頃に咲くはずのたんぽぽが咲いていた。

でも、色が黄色ではなく白だった。


……かわいい。


日の当たらない場所に姿を隠して、寂しそうにぽつんと咲いている。

その姿が酷く切なく思えて、泣きそうになってしまう。



「……泣かないで」



そのたんぽぽの花弁の先に、軽く指が触れた瞬間だった。



『───────これ、あげる!』


「…っ!いっ…」


『───────もちろんだよ!』


「う、っ、」


『───────────また会おうね、約束だよ』



キーン──────────と耳鳴りがして、目の前のたんぽぽが揺れ出した。