この世界に正解はあるか?
あるわけないだろう、大人が決めた道を行け、だなんて、本当にそれが正解なのか。
僕は違うと、首を横に振るだろう。
じゃあ何が正解?
そう問われてしまうと、きっとぼくは口を噤んでしまう。
ツー、と生暖かい何かが頬を伝って流れ落ちた。
それまでぼやけていた視界が、少しだけクリアになった気がした。
優真の携帯の画面に、ポツ、と一滴の雨が降った。
それはなかなか止んではくれなくて、もうひとつ、またひとつと落ちていった。
やだなあ。最近情緒が不安定で困る。
だけど、でも。
ぼくはきっと、今ちゃんと生きていたとしても誰の役にも立てなかったはず。
…ぼくが臆病だから。
生きていても死んでいても、ぼくはぼくでしかなかった。
「…え、伊緒…?もしかして泣いて─────」
「ぎゃぁぁあああーーーーー!!」
優真が目を見開いて、パッと顔をあげた時、脱衣場の方からとてつもなくでかい悲鳴が耳に届いた。
何事かと思い、止めるのに苦労していた涙もきゅっと止まった。
「えっ、どうした?!」
キッチンにいた優たちも、バタバタと脱衣場の方へと走っていった。
