そう思った僕は、さっさと燈真を部屋に戻した。
いつも無表情で何を考えているのか分からないけど、今はいつも以上に何を考えているのかわからなかった。
だからぼくも、何をいえばいいのか分からなくなってしまって。
パタン────と扉の閉まる音が虚しく響いた。
そしてその場でぼくは一気に息を吐き出し、天使とさんとの会話を思い出していた。
……間違いない。見間違えるはずがない。あの天使さんは、ぼくの兄だ。
忘れるわけが無い。忘れられるわけがなかった。
『それがあなたのように面白くて、笑顔の可愛い女の子でした。』
『……なんだか、僕と似てる気がします』
『────────ありがとう、伊緒。』
「はぁ…っ、兄ちゃん…」
ぼくには兄がいた。
優しくて、泣き虫なぼくの頭をよく撫でてくれて。
ちゃんと頭の中を整理しようと思ったのに、泣いていては何も出来なかった。
