「え…?」
「え…?」
扉越しに何かが落ちる音がして、そちらを振り向いた。
だけどそこにはなんにも落ちていなくて、だけどそこには恐らく寝起きの目を見開く一華が立っていて。
ぼくが見えていなくても、何をしているのかきっと分かったのだろう。
口を金魚のようにパクパクとさせ、テンパっているのか星奈を起こそうとしていた。
それはだめだと、星奈だけは何があっても起こすなとジェスチャーを送っても、今の一華にはなんにも伝わっていなくて。
「だっ、だめだってば…っ!」
小声で叫ぶけれど、もう遅くて。
目を覚ましてしまった星奈はこちらの部屋のベランダにいる燈真を見て、ぎょっと目を見開いた。
だけどそれも一瞬で、直ぐに目付きが変わった。
それはそれはもう恐ろしくて、ビームでも喰らったかのようにぼくら2人は同時に息を吐き出した。
