そういうのに、いちいち心臓が音を立てる。
ぼくは"ここ"に或る存在ではないのに、燈真の小さな仕草にドキドキして、生きているとさえも錯覚してしまいそうだった。
「…まだ。恥ずいんだけど」
「あ、ごめ…っ」
お願いしといて待たせてしまうとは、なんというやつだぼくは。
意識をはっきりさせ、燈真との少しの距離を埋めた。
さっきよりも近くなった距離。
ぎゅっと目を閉じて、近づく度に心臓が一層騒がしく動く。
さっきの燈真と同じように、僅かに触れるだけのキスを。
──────そして、1秒にも満たない時間でぼくらの影が重なった。
直に感じる燈真の温度が、氷点下のぼくを一瞬で上げた。
うーん。だけどおかしなことに、何も起こらな─────────ドンッ。
