「お願い!なんか思い出せそうなんだよ!ほんっとにごめんだけど、お願い!」
頭を下げてお願いする。
こんなことをお願いするぼくは本当に最低だと思う。
中学生の、受験生の、思春期青春真っ盛りの学生のファーストキスかもしれないそれを奪ってしまって申し訳ないけど。
だけど、記憶を早く戻した方が燈真たちにも迷惑をかけずに済む。
そう思ったぼくは、ここで一生のお願いを使った。
「……いーよ」
「え…っ、マジ?!」
「その代わり、隠してること全部教えて。あと僕のお願いも聞いて。」
本っ当にありがたく…!
燈真の心はきっと海より広い。
そんな燈真の条件に、首がもげるほど頷いた。
「ん、どーぞ」
そう言いながら、ぼくよりほんの数センチ高い燈真が少し屈んだ。
薄い唇が、突き出て尖る。
スッと目が閉じられると、女の子のように長い睫毛が影を落とした。
ちゃんと顔を見た事がなかったけれど、整った顔立ちをしていて。
少しだけ、仄かに赤い頬とか、風が吹く度に揺れる色素の薄い燈真の髪とか。
