「……そんな過去を、どうして覚えてるんですか?天界なら、お願いすれば消してもらえるんじゃ…」



そこが、どうしてもぼくの中で引っかかった。

そんな日々を過ごしてきて、ぼくなら全部まっさらにしたい。

そう思うのが普通なのではないのだろうか。

なのに何故?そこがどうしても気になってしまった。



「確かに、記憶を消すか問われました。だけど、どうしても消すことは出来なかった。友達のことも。短いけれど幸せだった日も、ね。何より妹がすごく心残りでした。

一応手紙は書いたんですけど、それを妹たちが読んだのかは定かではないです。僕が天使でいるのは、待ってるからです。妹を。」

「その妹さんが来たら、天使さんはどうなるんですか…?」

「使いをやめて、妹と一緒に往くよ。」

「……すごい溺愛っぷりですね」

「友だちにもよく言われてたな…でも、もうそんな必要も無いみたいです。だから僕は、あなたを送り届けたら使いをやめようかなと」

「…そう、ですか」



そう語る天使さんは、どこか遠くを見つめていた。