「過去のこと、覚えてるんですか…?」



控えめにそう聞くと、柔らかく微笑んだ天使さんは「まぁ、そうですね」と答えた。



「僕も虐待を受けてた時期があって。」



そ、そんな共通点があったなんて。

あまりにも嫌な共通点だ…。

次の言葉を待っていると、天使さんはハッとしたような表情をした。



「って、僕の話なんか興味無いですよね。今はあなたの話をしていたのに…」

「い、いえ。その、良ければですけど…天使さんの話、聞きたいです…ぼく、話すことあまり、ないんで……」



そう言ったぼくに一瞬だけ目を丸くした天使さんは、すぐに優しく笑って、「ありがとう」と言った。



「僕が小学校中学年の頃に両親が離婚して、僕は母親に引き取られました。

それからすぐです。2人で過ごすようになってから、母親は急に暴力を振るい始めた。どちらかというと父親の方がそうで、元々父の家庭内暴力が原因で離婚したんです。

その時はなんでこんなことするんだろうって思ってたけど、今思えば色々と何かが溜まってたのかもしれないなって。」

そんな日々を過ごしながら、なんとか中学校に入学したらしい。