桜ヶ丘高校。
都内でも有数の進学校である。
運良くこの高校に入学でき、今日が入学式。
門をくぐったところにある大きな桜の木のそば。
きっとこの瞬間が初めての出会い。
入学式を終え、幼なじみの千咲(チサキ)と兄の経営するカフェへ向かう時のことだ。
部活勧誘でにぎわうなか1人の先輩と目が合った。目が合っただけ。そのはずなのに、金縛りにあったかのように体が動かない。
「乃愛?どしたん?」
「あ、ううん、なんでもない。行こ」
千咲に呼ばれようやく体が動いた。
どれだけ目が合ったのか分からない。数秒かもしれないし数分かもしれない。いや、数分は無いか。
私は知らない。
この時、彼がまだ私を見ていたこと。
彼が私を知っていたこと。
ただ春の香りがするだけ。
「…のあ…乃愛…約束通り、来てくれたんだ…」
彼の呟きは春風と共に青い、広い空へ消えた。
都内でも有数の進学校である。
運良くこの高校に入学でき、今日が入学式。
門をくぐったところにある大きな桜の木のそば。
きっとこの瞬間が初めての出会い。
入学式を終え、幼なじみの千咲(チサキ)と兄の経営するカフェへ向かう時のことだ。
部活勧誘でにぎわうなか1人の先輩と目が合った。目が合っただけ。そのはずなのに、金縛りにあったかのように体が動かない。
「乃愛?どしたん?」
「あ、ううん、なんでもない。行こ」
千咲に呼ばれようやく体が動いた。
どれだけ目が合ったのか分からない。数秒かもしれないし数分かもしれない。いや、数分は無いか。
私は知らない。
この時、彼がまだ私を見ていたこと。
彼が私を知っていたこと。
ただ春の香りがするだけ。
「…のあ…乃愛…約束通り、来てくれたんだ…」
彼の呟きは春風と共に青い、広い空へ消えた。
